副業の目的とは?
国が副業を解禁する目的
2016年9月に政府によって設置された「働き方改革実現会議」は、労働環境の改善と生産性向上を目指し、その一環として働く人が個人の専門性や能力を最大限に発揮できる機会を増やすことを掲げました。この取り組みは、日本の経済を活性化させ、新たな雇用と需要を生み出すために新事業や創業を促進することが必要とされています。
しかし、現状では日本の開業率はOECD諸国の中でも低い水準にとどまっています。こうした状況を打破する一つの手段として注目されているのが、副業を通じて新しい事業機会を見つけ、個人の潜在的な起業スキルを発揮することです。2018年1月からは厚生労働省が「副業や兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、柔軟な働き方を後押ししています。
この動きは、少子高齢化が進む中で、労働生産性向上の鍵となっています。企業の枠を超えて個人のスキルを高め、多様な働き方を促進することで、新しい価値が生まれ、経済全体が活気づくことが期待されます。
また、日本が抱える少子高齢化や都市部への人口集中といった課題にも新たな視点が求められています。副業を通じて得たノウハウやスキルを地方に活かし、地域社会に貢献することは、地方の中小企業や公益的な事業における人材供給に対する新たな可能性を拓くものとなるでしょう。これにより、地域間の人材格差が緩和され、地方でも働きながらキャリアを築くことが期待されます。
新しい時代の副業:収入増加だけでなく多彩な成長への道
副業を始める人々の動機は、従来通り「収入を増やしたい」という理由が上位に位置していますが、最近では新しい形の副業を求めるケースも増えています。
2018年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」によれば、副業・兼業を望む労働者が直接的な収入増加以外の理由を挙げるケースが増加しています。アンケート結果では、「自分が活躍できる場を広げたいから」「さまざまな分野における人脈を構築したいから」「組織外の知識や技術を積極的に取り込むため(オープン・イノベーションを重視)」といった目的を掲げる人が30%以上を占めています。また、「転職したいから」「起業したいから」といった自己実現を目指すケースも見受けられます。
副業がもたらすメリットも多岐にわたります。収入の増加はもちろんのこと、本業とは異なる分野でのスキルや経験の獲得が可能です。これにより、本業に新たな価値をもたらすことが期待できます。また、リスクを最小限に抑えつつ、起業や転職の準備ができる点も魅力です。本業の所得を確保しながら、自己実現を追求し、幸福度を向上させる可能性が広がっています。
将来のキャリアアップを考える上でも、副業は新たな可能性を切り拓く手段として注目されています。収入だけでなく、自身の成長や幅広いスキルの磨き直しに挑戦しやすい環境が整っていると言えるでしょう。
副業ができないケースとは
副業には多くのメリットがありますが、実際には副業を始めることが難しい状況もあります。以下に、その主なケースを確認しておきましょう。
- 会社の就業規則による禁止:
- 多くの企業が就業規則で副業を禁止している場合があります。リクルートキャリアの調査によれば、全体の28.8%の企業が兼業・副業を容認しているだけであり、副業が禁止されている企業が多いことが示されています。
- 企業の副業意識の低さ:
- 経済産業省の調査によれば、副業を行っている企業は1割未満であり、兼業や副業を認めてもいいと考える企業も40〜50%にとどまっています。企業の副業に対する認識が低い場合、副業が難しい状況が続く可能性があります。
- 実際の制約や制限:
- 就業規則で副業が許可されていても、実際には本業が多忙で副業に時間を割くことが難しい場合があります。また、体力的な問題や健康面の制約がある場合も考えられます。本業と副業のタスク管理が難しい場合も、副業を始めるハードルが高くなります。
- 社会人のインターンシップの検討:
- 副業が難しい場合、社会人のインターンシップはキャリアアップやスキルアップを追求する手段として検討できます。副業に比べて柔軟な働き方や学びの機会を提供する企業も増加しており、新しいキャリアの可能性を見つける手助けとなるでしょう。
企業が副業を禁止する理由
企業が副業を禁止する理由はいくつかあります。以下に、具体的な理由を見ていきましょう。
- 本業への支障:
- 長時間の労働が従業員の心身に悪影響を与え、本業の生産性低下のリスクが高まることが懸念されています。
- 人材流出や人手不足:
- 副業がきっかけとなり他社への転職や独立を考える従業員が増加することで、人材流出のリスクが高まります。また、副業によるスキル向上が本業にプラスになる一方で、人手不足を引き起こす可能性も考慮されます。
- 従業員の健康配慮:
- 就業時間外の活動に関する企業の管理責任が不透明であり、問題が発生した際に企業の責任が問われる可能性があるため、従業員の健康管理に対する懸念が存在します。
- 情報漏洩やリスク管理:
- 本業で得た情報漏洩や、同業他社での副業による損害のリスクが懸念されます。副業先との労働時間や社会保険料などの管理が複雑になり、リスク発生とそれに伴う経済的な負担が考慮されます。
企業が政府の副業解禁を受けても副業に対して慎重な姿勢を取る理由は、これらのリスクや課題に対する懸念が影響していると言えるでしょう。
副業を歓迎する企業の副業活用方法
現在、企業の中には副業を認める動きが広がっています。その理由と今後の展望について以下にまとめてみました。
副業を認める理由:
- 収入増加への期待:
- 副業は従業員の収入増加につながります。この点は企業にとっても従業員の生活の向上に寄与し、モチベーション向上に繋がると考えられています。
- 人材育成やスキル向上:
- 副業は従業員のスキル向上や新しい知識の獲得につながります。企業が従業員の成長をサポートすることで、組織全体のパフォーマンス向上が期待されます。
- 定着率向上と継続雇用の促進:
- 従業員が自らの興味や能力を追求する場を提供することで、企業における定着率向上や継続雇用が促進されると考えられています。
- 新事業の促進:
- 副業を通じて得られたアイデアやスキルは、新しい事業の創出に繋がる可能性があります。企業はこれを活かしてイノベーションを促進し、競争力を強化できます。
- 社外の人脈形成:
- 副業は従業員が社外で人脈を広げる機会となります。これが企業にとっては新たなビジネスチャンスの創出や協力関係の構築につながります。
今後の展望:
- 副業を認める企業が増えつつあるものの、「特に禁止する理由がない」が上位に挙がっており、まだまだ制約や課題が残っています。
- 就業規則への明示や労働時間合算に関する手続きの煩雑さが問題視されていますが、今後はこれらの課題に対する環境整備が進むことが期待されます。
副業を始めるには目的を明確に
副業は以前と比べて、その目的が大きく変わりつつあります。ただし、副業は本業ではなく、無理に始める必要はありません。例えば、SNSやブログを利用したアフィリエイトなど、参入が容易な副業もありますが、「ただ何となく」「周囲が始めたから」といった理由で目的を持たずに始めると、継続は難しいでしょう。
もし副業を始めようと考えているのであれば、まず最初に「具体的に何のために副業を始めたいのか」「副業を始める目的は何か」を検討しておくことが重要です。目的をはっきりさせることで、自分の動機や期待値を理解し、継続的な取り組みがしやすくなります。
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